青葉山(仙台市)のヒメギフチョウ

青葉山でヒメギフチョウと出会ったのは2005年のことだ。4月初めのことだったが、とある森の中で良好な生息地を発見し、この蝶の好む生息環境や植生について調査した。その成果は日本昆虫学会誌と野生生物保護誌に発表している。

当時、ヒメギフチョウはさほど珍しい蝶ではなく、青葉山のかなりの範囲で生息地を見つけている。しばらくは研究ができるだろうと期待したが、翌年になると状況は一変した。一気に個体数が減少したのだ。

2007年になると状況はさらに悪化し、目撃できたのは僅かに数個体だった。そして翌年にはとうとう1個体も見つけることができなかった。この急激な減少の原因についてはどの場所も一気にいなくなったことから、越冬時や天敵生物による致死率がマイナスに働いたことなどが考えられる。

それでもどこかに生き延びているだろうと、毎年春になると青葉山を歩き回った。しかしその願いは何年もむなしく終わった。こうした経緯から青葉山では絶滅したのではないだろうかと思うようになった。

2023年3月31日、この日、私はかつての生息地を訪れていた。カタクリは満開で、もし生き残っていれば飛んでもおかしくない。しかし、どこにも姿はない。やっぱり、だめか。そう結論づけて立ち去ろうとした時、1頭のヒメギフチョウが笹原ごしに飛んでくるのが見えた。青葉山のヒメギフチョウはまだ絶滅していなかった。きっと私の知らないどこかに生息地があり、そこで個体数を維持していたのだろう。

この2023年の再発見以降、本格的な生息調査は行なっていない。一つの理由はクマだ。かつての生息地の多くが藪となり、最近のクマ多発の状況では調査を自粛せざるを得なかった。きっと私の知らない生息地がどこかにあるのだろうが、その場所を見つけることはもうないかもしれない。

写真は私が青葉山で撮影した最後の個体だ。以後、目撃はできても撮影の機会には恵まれていない。

青葉山のヒメギフチョウ(2007年4月7日)

                                                                                     © 昆野安彦 山の博物記