クマガイソウ

クマガイソウは北海道南部から九州にかけての山林、とくに杉林や竹林の林床をおもな自生地とするラン科アツモリソウ属の多年草である。草丈は40cmほどになり、茎の先に大きな花を一輪つける。

花の構造は5枚の花弁と大きな唇弁1枚からなるが、2枚の側萼片が唇弁の背後で合着して1枚に見えるため、唇弁を除く花弁の数は4個に見える。ボリューム感のある袋状の唇弁の薄紅色は大変美しく、山野草愛好家の人気は非常に高いものがある。そのためか、各地で個体数が減少し、現在は絶滅危惧種Ⅱ類(VU)に指定されている。

名前の由来は戦国の武将、熊谷直実で、膨らんだ唇弁の形を馬にまたがる熊谷直実が背中に羽織った母衣(ほろ)に見立てたものである。この母衣は風を受けて膨らむことにより、敵からの矢や石を防ぐ効果があったとされている。

クマガイソウ
薄紅色の唇弁が美しいクマガイソウの花

                       © 昆野安彦 山の博物記