仙台のナガサキアゲハ

仙台に住んで20年になる。青葉山を中心にいろいろな昆虫の調査・観察をしてきたが、南方系と言われるナガサキアゲハに逢ったのは、ただの一度だ。

2012年9月25日。この日、私は頼まれ仕事で朝から台原森林公園にある仙台市科学館にいた。昼休みに気晴らしで科学館の外に出てみると、黒い大型の蝶がこちらに飛んでくるのに遭遇した。最初はクロアゲハだろうと思ったが、どうも様子が違う。近づいてくる蝶の翅の基部が妙に赤い。私は瞬時に判断した。「ナガサキアゲハだ!」

沖縄で見たことがあるので間違いようがない。様子を見ていると近くのカラタチに産卵を始めた。翅がかなり破損していたので、ここに来るまで相当の時間経過が感じられ、その産卵行動にしても最後の力を振り絞っているように見えた。

網がないので捕獲はできなかったが、卵という貴重な証拠を残してくれた。11月に再びこの場所を訪れてみると、予想通りカラタチからナガサキアゲハの5齢幼虫が見つかった。ここに掲げた写真はその時のものである。

以上が私が遭遇した仙台のナガサキアゲハの事の顛末である。仙台でのこの蝶の記録は当時も今も非常に少なく、もしかすると2012年当時としては、私のこの観察記録が本州最北の確認記録かもしれない。

仙台のナガサキアゲハ
仙台のナガサキアゲハ(5齢幼虫)

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