上高地の爬虫類

上高地には爬虫類としてアオダイショウ、シマヘビ、ヤマカガシなどのヘビ類、ニホントカゲとニホンカナヘビなどのトカゲ類が生息している。

これら爬虫類の多くは体温が外温性で気温にその行動が大きく制御される。そのため、平野部と違って夏でも涼しい上高地ではこれらの爬虫類の個体数はあまり多くないが、晴れた日には陽の射す場所で体を温めている姿を見かける。

アオダイショウとシマヘビは無毒だが、ヤマカガシは奥歯と頸部皮下に毒腺を持っている。これら3種のヘビの斑紋は専門知識のある人なら見分けはつくが、個体変異によってヤマカガシと紛らわしいアオダイショウもいる。このため、アオダイショウと勘違いしてヤマカガシに触れたり噛まれないよう、十分な注意が必要である。私は小梨平キャンプ場の木橋で日向ぼっこするアオダイショウや、ウエストン園地近くの湿地で水の中から鎌首をもたげていたシマヘビを観察している。

ニホントカゲとニホンカナヘビは平野部でも普通に見られるトカゲ類。上高地では梓川岸辺の日当たりのいい石の上や河童橋周辺の石垣で日向ぼっこする姿を見ている。なお、これまで1種と思われていたニホントカゲだが、近年、遺伝子解析の結果から近畿地方を境界に東日本の個体群が新種のヒガシニホントカゲとして分割された。このため、従来のニホントカゲは近畿以西の個体群となり、上高地の個体群は地理的にはヒガシニホントカゲと思われる。

               


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