上高地の野鳥

上高地は北アルプスの山間部にも関わらず、広々とした平野部に川と森が混在するため、さまざまなタイプの野鳥を観察できる。ここでは私がふだん観察を行っている場所で見ることのできる野鳥を紹介する。

まず最初は河童橋からウエストン碑までの自然研究路である。ここはタニガワハンノキを主体とする疎林が広がるが、5月~7月は繁殖期の野鳥のさえずりがここかしこで聞こえる。よく見かけるのはキビタキ、アオジ、ウグイス、コサメビタキ、メボソムシクイ、コゲラ、ヒガラ、コガラ、ゴジュウカラで、そのほか、カケス、ルリビタキ、オオルリも見かける。道沿いの湿地ではマガモが見られ、時にはオシドリの姿も見られる。

テントを張ることの多い小梨平キャンプ場も野鳥が多い。場内ではミソサザイやコマドリがさえずり、ハルニレやカラマツの巨木ではオオアカゲラやアカゲラのドラミングも時折聞こえる。小梨平の岸辺ではキセキレイ、イカルチドリが見られ、清流・清水川ではカワガラスやマガモも姿を現し、この清水川の背後の崖地からはエゾムシクイの「ヒーツーキー」という長閑なさえずりが聞こえる。上高地では珍しいキバシリを初めて見たのも小梨平である。

小梨平から明神までの間はコマドリとミソサザイが多く、シーズン中は多くの野鳥カメラマンが行き交う。また、明神の先の徳沢キャンプ場にはアカハラが多く、いつもその牧歌的なさえずりがハルニレの森に鳴り渡っている。

この徳沢からの蝶ヶ岳に登ると、運が良ければ特別天然記念物のライチョウに会うことがある。槍・穂高連峰を背景にしたライチョウの姿は大変絵になり、カメラマンの良い被写体になっている。










                                                                                     © 昆野安彦 山の博物記