上高地の両生類

上高地には両生類として、ヤマアカガエル、モリアオガエル、アズマヒキガエル、クロサンショウウオなどが生息している。そのほか、山間部の渓流にカジカガエル、ハコネサンショウウオなども生息している。

 ヤマアカガエルは止水性のカエルで田代池などの湿地で見ることができる。大きさはトノサマガエルより少し小さく、赤っぽい茶色をしている。産卵は早春で、まだ雪の残る時期に行われる。卵は千個ほどが集まった大きなゼリー状の卵塊で浅瀬ではよく目立って見つけやすい。繁殖期以外は森の中で見かけることが多く、私はヤマカガシに追われて捕食された個体を見たことがある。なお、本種は日本固有種である。

 アズマヒキガエルは体長18センチにもなる大型のカエル。繁殖期以外は陸上で生活し、林内で昆虫などを捕食している。上高地での繁殖期は5月で、浅い水たまりなどに長い紐状の卵塊に包まれた数千個の卵を産む。成体は大型だがオタマジャクシは成長しても3センチほどで手足が生え、体長5センチほどになるヤマアカガエルのオタマジャクシよりも小さい。

 モリアオガエルは樹上に卵を産むことで知られるカエル。上高地では6月の終わり頃、真下に水面のある樹上に白い泡に包まれた卵塊を見ることができる。この泡の中で孵ったオタマジャクシは雨の日などに真下の水中に落下し、そこで成長する。成体は水辺を離れ、森の中で昆虫などを捕食している。

 カジカガエルはフィフィフィフィフィフィと鳴く声が鹿の鳴き声に似ているので「河鹿蛙」と名付けられている。もっとも、人の気配に敏感で、すぐに岩陰に隠れてその姿はなかなか見つからない。成体はオスは4cm、メスは7cmほどである。

 クロサンショウウオは日本固有種。成体の大きさは15センチほど。成体は陸地性のために見る機会は少ないが、幼生は止水性で上高地では田代湿原の湿地で水中にいる様子を観察することができる。繁殖期は5~6月。メスは湿地などの止水域にアケビの果実状の不透明な卵のうを一対産む。上高地にはそのほか、渓流に流水性のハコネサンショウウオが生息している。 

上高地の両生類
田代池で顔を出すヤマアマガエル
                                               
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