上高地を歩くと時々キノコを目にする。キノコは菌類で、私たちがキノコと認識している形のものは植物でいえば花に相当する器官で子実体と呼ばれ、胞子を作る役割を担っている。キノコの多くは胞子形成の仕組みによって担子菌類と子嚢菌類の2種類に分類される。私たちにお馴染みのマツタケやシイタケは担子菌類で、トリュフやアミガサタケは子嚢菌類である。
上高地でよく見かける担子菌類の一つにサルノコシカケ科のキノコがある。樹木の幹に半円形の硬い子実体が生じ、それがいかにも猿が腰かけるように見えることから付けられた名前だ。そのほか、上高地ではサルオガセと呼ばれる木の樹皮や樹枝から垂れさがる仙人の髭のような地衣類を目にするが、地衣類は藻類と共生する子嚢菌類である。
© 昆野安彦 山の博物記