上高地のラン科植物

ラン科植物は植物愛好家に人気の高い一群だが、上高地にも数種が自生している。私が確認しているのは、イチヨウラン、オニノヤガラ、ショウキラン、ノビネチドリの4種である。

イチヨウランは根生葉が一枚だけなのでこの名前がある。花茎の先に一つだけつく姿はとて上品で美しい。上高地では6月頃に林内で稀に見られる。葉の葉身は卵形で長さ5cmほどもあり、小さな花とは対照的だ。

ノビネチドリは花茎の先にピンク色の花を多数つけるので、林内ではよく目立つ。ウエストン碑付近の散策路などでも見つかるが、たいてい一株ずつ咲き、群生することは少ない。花期は7月頃。

オニノヤガラは木材腐朽菌のナラタケから栄養提供を受けて生活している腐生植物。7~8月に黄褐色の花が50個ほどもついた高さ1mほどの葉のない茎が林内に「にょきっ」と出ているので、気をつけていれば見つけることができる。名前は「鬼の矢柄」と書き、花茎の形を鬼が使う矢にたとえたものである。

ショウキランもオニノヤガラと同じ腐生植物。根に共生する菌類から養分をもらって栄養を得ている。葉を持たず、花茎だけを伸ばす。ピンク色の花は径が3cmほどもあり、よく目立つ。上高地では小梨平~明神などで見ることができる。花期は6月。

上高地のラン科植物
林床にひっそりと咲くイチヨウラン(上高地)

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