上高地の花と野草

上高地には季節を追ってさまざまな野草が花を咲かせる。ここでは季節の順に上高地のおもな野草を紹介する。

5月、まだ朝夕は冷え込む季節、上高地の森にフキ、フッキソウ、ヤマエンゴサク、タチツボスミレなどの春の訪れを告げる花が咲き始める。春の花が本格的に咲きだすのは5月下旬。ニリンソウ、シロバナノエンレイソウ、コミヤマカタバミ、ミヤマキケマン、ミヤマハタザオ、ハシリドコロ、キジムシロ、ネコノメソウなどが春の上高地を彩る。

6月、梅雨時で曇り空の日が多くなるが、上高地は初夏をむかえ、花の種類は一気にその数を増やす。イワカガミ、アマドコロ、エゾムラサキ、オオバキスミレ、オオタチツボスミレ、オオヤマフスマ、カミコウチテンナンショウ、クルマバソウ、クルマムグラ、シロバナノヘビイチゴ、ショウキラン、ツマトリソウ、テングクワガタ、ヒメヘビイチゴ、マイヅルソウ、ラショウモンカズラ、ツボスミレ、ツルネコノメソウ、ノビネチドリ、サンカヨウ、タガソデソウ、ダイコンソウ、マムシグサ、ユキザサ、ヤマシャクヤクなどが初夏の上高地を彩る。

7月、梅雨の開けた上高地は夏の季節を迎える。暑い日差しを避けながら森の小道を歩くと、アカバナ、イタドリ、イワオトギリ、ウツボグサ、オオバキスミレ、オオバミゾホオズキ、オドリコソウ、キバナノヤマオダマキ、ギンリョウソウ、クロクモソウ、ゲンノショウコ、ゴゼンタチバナ、ズダヤクシュ、ツバメオモト、ハクサンオミナエシ、ベニバナイチヤクソウ、カラマツソウ、ミヤマカラマツ、アケボノソウ、オオウバユリ、オオカサモチ、オニシモツケ、カニコウモリ、クガイソウ、キツリフネ、クサボタン、シロバナグンナイフウロ、タマガワホトトギス、ソバナ、トモエソウ、トモエシオガマ、ニッコウキスゲ、ノアザミ、メタカラコウ、ヤグルマソウ、ヤチトリカブト、ヤナギランなどが夏の上高地を彩る。

8月から9月の盛夏~晩夏は花の数は少なくなるが、それでもアキノキリンソウ、オヤマボクチ、キオン、コウシンヤマハッカ、コウゾリナ、コウモリソウ、ゴマナ、シラネセンキュウ、ツリフネソウ、ノコンギク、ハンゴンソウ、ヨツバヒヨドリなどが上高地の花の季節の最後を盛り上げる。

なお、蝶ヶ岳などの上高地周辺の山には高山植物が可憐な花を咲かせる。代表的なものを挙げると、コケモモ、アオノツガザクラ、チングルマ、イワウメ、ミネズオウ、ハクサンフウロ、トウヤクリンドウ、ミヤマリンドウ、コバイケイソウ、クルマユリ、シナノキンバイ、ハクサンイチゲ、ヨツバシオガマ、ミヤマキンバイなどである。上高地の花の経験を積んだら、次は山に登ってこれらの高山植物を観察するのもいいだろう。

                                                                                    © 昆野安彦 山の博物記