大雪山の蛾類

亜高山帯~高山帯で生活史を完結させている蛾を「高山植物」や「高山蝶」にならって「高山蛾」と呼ぶ。ここでは大雪山に生息する高山蛾について紹介する。

ウスバキチョウが大雪山にしかいないように、高山蛾にも日本では大雪山だけに生息する種がいる。ダイセツヒトリ,ダイセツドクガ,ダイセツタカネエダシャク,ダイセツホソハマキ,コイズミヨトウ、オーロラヨトウ、クロダケタカネヨトウ、コシモフリヒメハマキ、コウノエダシャクなどである。

蛾の多くは夜行性だが、夜間の冷え込みの厳しい大雪山では暖かい日中に活動する種類が多い。大雪山でよく見かける昼飛性の高山蛾は、ダイセツドクガ、ダイセツヒトリ、ダイセツキシタヨトウ、コイズミヨトウ、それにダイセツタカネエダシャクなどである。

そのなかの一種、ダイセツヒトリは「高山蛾のウスバキチョウ」と呼ばれる美麗種で、7月上旬にその美しい姿が見られる。風衝地の地面に止まっているところを発見することが多いので不活発な蛾と思いがちだが、一旦飛び立てばなかなか敏速に飛翔する。幼虫はキバナシャクナゲの葉を食べて育つが、ダイセツタカネヒカゲと同じく幼虫で2度も越冬する。

私がよく利用する白雲岳避難小屋の周囲は高山植物の宝庫だが、高山蛾に関してもこの小屋のまわりはなかなかの宝庫だ。高山蛾の幼虫は高山植物を食べて育つので、高山植物の豊富なこの小屋周辺は自ずと高山蛾も豊富になるのだろう。

 YouTubeにはダイセツヒトリとダイセツドクガの幼虫の姿を公開しているので、興味のある方は御覧いただければと思う。











                                                                                     © 昆野安彦 山の博物記