大雪山の湿原や池塘ではトンボの姿が見られる。トンボの種類にも標高によって違いがあり、たとえば標高1800m の忠別沼ではクモマエゾトンボ、オオルリボシヤンマ、ルリボシヤンマ、エゾアオイトトンボ、エゾアカネの5種のヤゴを確認しているが、このうちクモマエゾトンボは北海道の中央高地に分布が限られ、高山蝶同様,氷期の遺存種と言えるだろう。
忠別沼よりも標高の低い亜高山帯の沼ノ原湿原で確認しているのはオオルリボシヤンマ、ルリボシヤンマ、カオジロトンボ、コエゾトンボ、ルリイトトンボだ。このうちルリイトトンボは、メスがホロムイスゲなどの水生植物の茎伝いに水中に没して産卵する独特の習性で知られる。ルリイトトンボは沼ノ原湿原に大変多く、ナガバノモウセンゴケの餌食になっているのもこのトンボのことが多い。
以上のように大雪山では亜高山帯から高山帯の池塘にはたいていトンボの姿があるので、池塘を訪れる機会があったらどんなトンボが飛んでいるか,観察してみるとよいだろう。
クモマエゾトンボのヤゴ(平ヶ岳南方湿原) |
© 昆野安彦 山の博物記