大雪山のクモ類

クモ類は捕食者として主に昆虫を餌としている。大雪山の高山帯では網を張る種類は稀で、多くは地上徘徊性だ。これは強風の吹く高山帯では網を張ることが難しいことや、餌となる昆虫が空中よりも地上に多いことと関係あるのだろう。

大雪山の高山帯で優占するのはコモリグモ科である。コモリグモ科のメスは産んだ卵を糸で包んで扁球状に仕上げて出糸突起につけて運び、孵化した仔グモを腹部の背中に乗せて保護する性質があり、このためコモリグモ(子守蜘蛛)と呼ばれる。大雪山高山帯からはアシマダラコモリグモ、ダイセツコモリグモ、タカネコモリグモ、エゾコモリグモ、チリコモリグモ、ヤマハリゲコモリグモ、キシコモリグモ、モリコモリグモの8種のコモリグモ科が記録されている(保田,1991)。

この8種のうち、私が見たことのあるのはアシマダラコモリグモ、タカネコモリグモ、ダイセツコモリグモの3種だ。よく見かけるのはアシマダラコモリグモ。腹部のハの字状の斑紋がお洒落なクモだが、その名前とは裏腹に脚は赤褐色であまりまだら模様っぽくない。脚がまだら模様なのはタカネコモリグモの方なので、両種を混同しないよう注意が必要である。

大雪山のクモ類
大雪山のアシマダラコモリグモ

                                                                                     © 昆野安彦 山の博物記