上高地の落葉広葉樹

落葉広葉樹の森は盛夏を除けば陽が地面に射しこみ、春の林床に咲く色とりどりの野草や秋の紅葉の美しさなど、上高地の自然を盛り上げるうえで欠かすことのできない要素になっている。

上高地で高木の落葉広葉樹としてよく目にするのは、ハルニレ(ニレ科)、タニガワハンノキ(カバノキ科)、シラカンバ(カバノキ科)、ダケカンバ(カバノキ科)、サワグルミ(クルミ科)、ヒロハカツラ(カツラ科)、ハウチワカエデ(カエデ科)、シウリザクラ(バラ科)、ナナカマド(バラ科)、ケショウヤナギ(ヤナギ科)、ドロノキ(ヤナギ科)などである。

梓川の岸辺ではケショウヤナギやドロノキなどのヤナギ類とタニガワハンノキがとくに多く、また小梨平や徳沢の森ではハルニレが多い。そのほか、ズミ(バラ科)キハダ(ミカン科)、シナノキ(アオイ科)、ミズナラ(ブナ科)なども見られる。なお、キハダはミヤマカラスアゲハの上高地における産卵植物である。

低木の落葉広葉樹としてよく目にするのは、オオカメノキ(レンブクソウ科)、ミヤマニワトコ(レンブクソウ科)、ノリウツギ(アジサイ科)、カントウマユミ(ニシキギ科)などである。中でもノリウツギはその白い花に蝶類やハナカミキリが集まるので昆虫好きは一目置く花でもある。

つる性の落葉広葉樹としてはツルアジサイ(アジサイ科)が挙げられる。枝から気根を出して樹木に絡みつき、高さ20mになることもある。花期は7月で、小さな両性花のまわりを白い装飾花が3~7個取り囲む。よく似たイワガラミは装飾花が1個なので見分けがつく。 

上高地の落葉広葉樹
上高地の森を代表するハルニレの美しい新葉

                                                                                   © 昆野安彦 山の博物記