大雪山の高根ヶ原南部の標高1700m前後の湿地帯を「平ヶ岳南方湿原」と呼ぶが、ここに永久凍土丘(パルサ)と呼ばれる直径10m前後、高さ2m弱の凸レンズ状の泥炭の高まりがある。パルサは地下の永久凍土層が地面を押し上げて作られたものである。
2002年にこの湿原で環境省の許可のもとに水生昆虫の調査をしたが、写真はその時に撮影したパルサである。左手の茶色い泥炭の高まりがパルサで、付随する水たまりは永久凍土が溶けるサーモカルストによって生じたものである。この水たまりではアミメカゲロウ目のセンブリや高山性トンボのクモマエゾトンボのヤゴなどを採集している。
その後、私はこの場所を訪れていないが、最近訪れた人の話ではサーモカルストによって凍土丘は消滅しつつあるとのことだった。もしかすると、写真のようなはっきりした丘状のパルサはもう見ることができないのかもしれない。
パルサ(左)とサーモカルストによって生じた水たまり |
© 昆野安彦 山の博物記