大雪山のラン科植物

ラン科の花は植物愛好家にとても人気のある一群。大雪山国立公園全体ではかなりの種類が自生していると思われるが、調査をしたことがないので全容を知らない。ここでは大雪山高山帯で私が見たことのあるラン科植物2種を紹介する。

一つ目はホソバノキソチドリ。やや湿った場所の草地などで稀に見られる。私は高根ヶ原で見たことがある。クリーム色の小さな花が茎先に10~20個つく。

ラン科の花の構造は複雑。3枚の花弁と3枚の萼片が交互に並ぶ構造だが、正面から見て一番下の花弁は袋状や舌状の唇弁と呼ばれ、この唇弁には距がついている種が多い。ホソバノキソチドリの場合、この距が約1.5cmと長い。「チドリ」という名前は花の形が「千鳥(チドリ)」が飛ぶ姿に似ていることから付けられたもので、キソチドリという別のラン科に似て葉が細いことから付けられた名前である。

二つ目はハクサンチドリ。茎の先端に赤紫色の花を多数つける。距の長さは1~1.5cm。風当たりの弱い稜線東側の草地や湿った場所の草地などに見られる。私は黒岳の登路や白雲岳避難小屋の周囲で見たことがある。

なお、ハクサンチドリには次の2つの品種がある。花の色が白いシロバナハクサンチドリと、葉に薄紫色の斑点のあるウズラバハクサンチドリで、両方とも私は大雪山で見たことがある。

大雪山のラン科植物
ハクサンチドリの花(白雲岳)

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