大雪山の成り立ち

大雪山の山としての特徴を一言で表すと「広大な山岳景観」になる。では、この山岳はどのような地史を経て作られたのだろう。

大雪山の土台となる「基盤」は地球規模でのプレート運動による隆起と何度も繰り返された火山活動によって複合的に形成されたが、その後、約100万年前から現在の大雪山の姿を形作る火山活動が起きたと考えられている。以下、山岳形成上の火山活動を古い順に列記する。なお、大雪山の成り立ちの歴史年代には諸説あることをお断りしておく。

100万年前~:粘り気の少ない流動性の高い溶岩が基盤上の広い地域に流れ出し、起伏の少ない広々とした溶岩台地を形成。現在の高根ヶ原や沼の平が誕生。

50万年前~:現在のお鉢平の場所にあった古中央火山が爆発して古お鉢平カルデラができるとともに、その周囲に白雲岳、小白雲岳、北鎮岳、凌雲岳、黒岳、桂月岳が形成される。その後、古お鉢平カルデラで火山活動が再び活発化し、お鉢平中央火山が形成される。

3万年前~:お鉢平中央火山が大爆発を起こして頂上付近が吹き飛び、その跡にお鉢平カルデラが形成された。このお鉢平から流れ出た溶岩は火砕流となって流れ下り、石狩川上流や忠別川上流に厚く堆積して台地を形成した。この台地を石狩川が削り取ってできたのが層雲峡、忠別川が削り取ってできたのが天人峡である。層雲峡や天人峡の見事な柱状節理の岩壁は、お鉢平中央火山が大爆発した際に堆積した火砕流の噴出物が溶結・圧縮して形成された緻密で硬い溶結凝灰岩である。

2万年前~:北海道最高峰の旭岳がもっとも新しい火山として誕生。誕生当初の旭岳は成層火山の美しい山容だったと思われるが、3000~1000年前に起きた爆発のため、現在の旭岳は山頂西側に馬蹄形状の爆裂火口が開いている。この爆裂火口は地獄谷と呼ばれ、今なお噴気活動が見られる。

以上、大雪山の成り立ちについて概略を説明した。お鉢平の崖の上に立つと、お椀型の広大なカルデラを一望できるが、大雪山のたおやかな山並みや層雲峡の形成に、この火口が重要な役割を果たしたことを思い起こしていただければと思う。

大雪山の成り立ち
大雪山の中央火口・お鉢平カルデラ

                                                                                      © 昆野安彦 山の博物記