アツモリソウ

アツモリソウは北海道と本州の山林や草原で稀に見られるラン科アツモリソウ属の多年草である。草丈は40cmほどになり、茎の先に大きな花を一輪つけるが、稀に二輪つけることもある。

花の構造は5枚の花弁と大きな唇弁1枚からなるが、側萼片は2枚が合着しているため、見た目の花弁の数は唇弁も含めて5枚である。その赤紫色の花はとても上品で美しいが、その美しさ故に個体数が減少し、現在は絶滅危惧種Ⅱ類(VU)に指定されている。

名前の由来は戦国の武将、平敦盛に由来する。その膨らんだ唇弁の形を馬上の平敦盛が背中に纏う母衣(ほろ)に見立てたのだが、これはクマガイソウの由来となった戦国の武将、熊谷直実の母衣と同様である。

クマガイソウとアツモリソウという日本を代表するラン2種の語源になった二人の関係だが、実際は非情な関係で、敦盛は平安時代の源平の戦い(一ノ谷の戦い)で直実に討ちとられている。その時、敦盛は弱冠17歳だったが、その若き面影は淡いピンク色の花弁に見ることができるのかもしれない。

アツモリソウ
美しいアツモリソウの花

                 © 昆野安彦 山の博物記