タカネキマダラセセリは本州の北アルプスと南アルプスの亜高山帯に生息する高山蝶である。成虫はイネ科のイワノガリヤスの葉に産卵するが、孵化した幼虫は2~3齢、および5齢で二度冬を越すため、卵から成虫になるまで約2年を要する。
北アルプスでは岳沢が良好な生息地として知られ、成虫の発生期である7月になると、ハクサンフウロなどの高山植物の花を訪れている姿を観察できる。北アルプス一帯の亜高山帯ではそのほかにも生息地があると思われるが、私は岳沢以外で本種の調査をしたことはない。
岳沢では幼虫の時期にイワノガリヤスの葉を探すと、幼虫を観察することができる。幼虫はイワノガリヤスの葉を数枚糸で綴って巣状にしているので、慣れれば見つけるのはそう難しくはない。
南アルプスでは仙丈ケ岳と北岳周辺の亜高山帯に分布しているが、個体数は非常に少ないとされている。私は南アルプスでは本種の調査したことがないので、南アルプス個体群の現状についてはよく知らない。
© 昆野安彦 山の博物記