ギンザンマシコはアトリ科の野鳥。全長およそ20cm、スズメとハトの中間ほどの大きさである。雌雄で色彩が異なり、オスは濃厚な臙脂色なのに対しメスは地味な黄褐色をしている。オスは繁殖期になるとハイマツの枝先にとまってピー、ピー、ピュイとフルートのような美しい声でさえずる。
ユーラシア大陸と北米大陸の北部に分布する環周極種だが、大雪山では春~夏によく見られるので、大雪山では留鳥として繁殖していると思われる。過去に大雪山で観察された繁殖記録によると、その時の営巣場所はハイマツ帯の中であったそうだ。冬の間は寒気を避けて山から平野部へ降りるため、また、大陸から冬鳥として日本に飛来する個体もいるため、旭川や札幌市内、時には本州でもギンザンマシコが観察されることがある。
大雪山で6月下旬~7月上旬に出会う個体はペアでいることが多く、ハイマツ帯の上をそろって飛んでいたり、風衝地で一緒にいる姿が観察される。風衝地を歩きながら地面をつついていることがあるが、おそらく高山植物の種子や新芽、あるいは昆虫を採食していると思われる。
北海道の個体群はユーラシア大陸における分布の南限となっている。氷河時代に大陸からやってきた個体群が、氷期が終わると大雪山などの高山に取り残された可能性もあり、もしそうならウスバキチョウやチョウノスケソウ同様、ギンザンマシコも氷期の遺存種かもしれない。
本種は日本では大雪山が分布の中心であること、大雪山で見かける野鳥の中では比較的大きいこと、美しいさえずり、そして一度見たら忘れることのできない印象的な色彩など、ギンザンマシコは大雪山を代表する野鳥と言っていいだろう。
© 昆野安彦 山の博物記